増田悦佐



目次
  1. 2014年世界3大経済の同時崩壊に備えよ
    1. アメリカ
      1. Fed悪玉論
        1. 学費ローンという地獄への道
          1. 児童虐待
            1. 國民皆武装化
            2. 中国
              1. 日本
                1. 岩井克人批判
                  1. 「地を受け継ぐものは…学ぶものである」エーリッヒ・フロム
                  2. 質問
                  3. 経済学「七つの常識」の化けの皮をはぐ
                    1. 対「浜田宏一氏」批判
                      1. イギリス株式市場の時価総額が日本やドイツより大きい不思議
                        1. ケインズ糾弾の根拠
                          1. 国の重要指標 = 失業率
                            1. まとめ
                            2. デフレ救国論
                              1. お江戸日本は世界最高のワンダーランド
                                1. 伊能忠敬
                                  1. 成果主義 vs 人柄主義
                                    1. 武士・町人共に楽しむ
                                      1. まとめ
                                      2. 世界経済の覇権史
                                        1. はじめに
                                          1. 第1章
                                            1. ヒッタイトが技術覇権国家となった理由
                                            2. 第2章
                                              1. 第5章
                                              2. 世界は深淵をのぞきこみ、日本は峻立する
                                                1. 製造業時間辺り賃金比率
                                                  1. ケインズ派経済学の大ウソ
                                                    1. イギリスはユーロに入らなかったのか、入れてもらえなかったのか
                                                      1. バンク・オブ・アメリカの利益は全て会計上の操作
                                                        1. 国の指標=対外債務、≠国債残高
                                                          1. 中央銀行は、マネーサプライも実質金利も調節できない
                                                            1. アメリカ経済に...デフレが忍び寄っている。
                                                            2. マネジメントの日米逆転がはじまる
                                                              1. 首切り→縮小再生産という道
                                                                1. 格差と失業率
                                                                  1. 芸能人のウラオモテ
                                                                    1. スケールメリットが成立しない条件
                                                                      1. MBA の失敗は現場軽視にある
                                                                        1. ベンチャーキャピタルは不細工な代用品
                                                                          1. 「労働生産性」の嘘
                                                                            1. 使える指標
                                                                            Sitemap | Profile | タグ一覧
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                                                                            Debian
                                                                            2023/08/02
                                                                            CentOS
                                                                            2023/06/13
                                                                            Dell-XPS13
                                                                            2023/05/23
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                                                                            SourceForge
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                                                                            2023/01/09
                                                                            風猷縄学
                                                                            2022/11/23


                                                                            [-] 1. 2014年世界3大経済の同時崩壊に備えよ

                                                                            読書ノート(2013/10月末)

                                                                            徳間書店ってトンデモ本が多いので注意が必要だけど、 増田氏はデータで持って説明してくれるので、 そこだけは事実と信頼している。 そして、誰も語らない裏面の事実だから貴重なのだった。

                                                                            [-] 1.1. アメリカ

                                                                            [-] 1.1.1. Fed悪玉論

                                                                            僕が読む限り、増田氏以外の誰もが(辛口な植草氏や大竹愼一氏さえも) Fed の仕事を高く評価していた。

                                                                            ところが、一人増田氏はこう言う:

                                                                            グリーンスパンが、サブプライムローンの証券化という明らかな欠陥商品を
                                                                            大々的に売りこみはじめた。
                                                                            (p.74)

                                                                            もちろん、巷に広がる陰謀論は論外だけど、増田氏は事実としてこういうのだ。 僕には今のところ判断材料はない。保留としなければならない…。

                                                                            [-] 1.1.2. 学費ローンという地獄への道

                                                                            アメリカがとても住みにくいと国になったと思われる事例をいやというほど この本では紹介している。

                                                                            救急を呼ぶのに何十万円もかかる、 という話は TV でも放映されてるので既に知っている人は多いだろう。

                                                                            けれども、学費の高さとローンの縛りもまた尋常ではない:

                                                                            借り手の債務奴隷化を防ぐために許されている債務免除のための免除条項が、
                                                                            学費ローンの借り手には、いっさい認められていない
                                                                            (p.113)

                                                                            [-] 1.1.3. 児童虐待

                                                                            驚くなかれ、年間300万件も報告されているという(p.126)。 人口比でいくと、日本で100万件、という数字になるが…。

                                                                            [-] 1.1.4. 國民皆武装化

                                                                            都市のスラム化と比較的裕福な仮定の郊外への脱出。

                                                                            数ヶ月ほどアメリカで生活した僕には不思議な現象だったが、 その謎がやっと解けた。

                                                                            詳しくは本書にて(^^)。

                                                                            [-] 1.2. 中国

                                                                            植草氏は「中国は底を打った」と言う。 増田氏は、統計データを出して「米国以上の惨状」と言う。

                                                                            僕としては、増田氏に軍配を上げたい。(2013年時点)

                                                                            [-] 1.3. 日本

                                                                            [-] 1.3.1. 岩井克人批判

                                                                            増田氏は、名指しで批判してくれるから面白い。 取り上げた部分に関しては、増田氏に軍配を上げざるを得ない。

                                                                            しかし、岩井氏、東大を出てイェール大学、という王道を進まれた方。 果たして総体的にどちらが正しいのかは、僕には分かってないけれども…。

                                                                            [-] 1.3.2. 「地を受け継ぐものは…学ぶものである」エーリッヒ・フロム

                                                                            p.242 での引用。

                                                                            この言葉は知らなかった。

                                                                            肝に銘じたい。

                                                                            [-] 1.4. 質問

                                                                            色々、データとしては大変参考になったのだけど、 下記について触れていないのが僕としては不満が残る。 今後の宿題としておきたい:

                                                                              1. PER 的にまだ割高でない(米国の経済反映はまだ続く)こととの整合性はどうみるか
                                                                              2. プラス面に触れていないため、どうしてもマイナス面だけ取り上げて 「アメリカは崩壊する!」と声を大にしている印象を受ける。 以下のプラス面はどう捉えればよいか:
                                                                                1. シェールガス革命
                                                                                2. ITベンチャー(Linux, Google, Facebook, 等)の台頭は、日本の比でない。 僕の実感としても参考になる情報は圧倒的にアメリカの方が多い。
                                                                                3. 電気自動車(EV)における、テスラの成功と日本のTBD(6輪自動車)の失敗。
                                                                                  • ま、これは比較の対象が間違っているのかも。トヨタ・ホンダ・日産・ 三菱がどう面白い EV を今後出してくるかに注目したい。
                                                                            1. 日本
                                                                              1. 「株高は…勤労者にとってマイナス(p.221)」なのはなぜだろうか?
                                                                                • 僕は、必ずしもマイナスとは思わないのだけど。持株会とか。
                                                                              2. アベノミクスはバブルか?
                                                                                • 植草氏や山崎元氏が指摘するように、PER 的に日本の株式市場は まだバブルではない(植草氏は 2013/10現在、理論値21,000円を示されている)。
                                                                                • また、植草氏が繰り返し指摘してきたように、民主党政権があまりにも ひどかったのだ。 増税路線を決定したのは他でもない野田氏だ。 安倍政権でようやくひとつの希望を見出した、 というのが妥当な評価ではないだろうか。
                                                                                • もちろん、残る問題は大きい。インフレターゲットは、 どうやら僕も間違っているのでは、と思えてきた。 野口氏が「糸でモノを引っ張ることはできるが押すことはできない」 という例を示してくれたけど、ここは増田氏の説明が分かりやすい。 「金利上昇は…経済の過熱を防ぐ自動制御装置なのだ」(p.55)
                                                                                  • で、金利を上昇させれば経済が加熱するわけではない、ということなのだ。 これは分かりやすい。自動制御装置から逆回転はできない。
                                                                                  • ただ、自然金利の概念を適用すれば、金利 1〜2%というのは、 意味のある数字なのでは、という気がしないでもない。 陥穽はどこにあるだろうか…。

                                                                            [-] 2. 経済学「七つの常識」の化けの皮をはぐ

                                                                            読書ノート

                                                                            安倍政権に関する氏の主張を知りたくて、つい買ってしまった。

                                                                            案の定(失礼m(__)m)、過去の氏の著作と重なるところは多いのだけど、 何点か面白い視点もあった。 今回、名指しで批判してくれたので、誰が要注意人物か分かるようになった。 いや、批判された側が正しくて増田氏が間違っていることもあるだろうけど、 最低限、両者の意見を両方聞いて、 自分でジャッジするだけの材料を得ることが出来るわけだ。 これもまた弁証法なのだろう。

                                                                            [-] 2.1. 対「浜田宏一氏」批判

                                                                            …浜田宏一は、経済理論家としての実績は皆無に等しい。文献整理程度の業績しか
                                                                            ない人間で、…コネしか売りのない人間だった。
                                                                            p.79

                                                                            いや〜、手厳しい(^_^;。Wikipedia 浜田宏一を読む限りでは、 それなりの業績がゲーム理論分野にあるようなのだけど。 それに、コネと文献整理でイェール大学の名誉教授になれたりするものだろうか?

                                                                            ここは、もう少し冷静に判断したいところだ。

                                                                            ともあれ、浜田氏批判は、僕の見る限り、野口氏・植草氏・増田氏・益田氏、と、 多い。だんだん僕は「反リフレ」に傾きつつある。

                                                                            [-] 2.2. イギリス株式市場の時価総額が日本やドイツより大きい不思議

                                                                            衰退著しいイギリス。 今や、ユーロの中心はドイツであり、 「袋叩きの20世紀」を米英から被ったドイツは、 必ずやひっくり返すことを誓っていることだろう。

                                                                            しかし、p.99 によれば、 イギリス株式市場の時価総額が日本やドイツより大きいのだそうだ。

                                                                            その理由は金融にある、とのこと。

                                                                            氏は、「株式市場は意外と慣性が大きい」とか 「株式市場の大きさと国民の幸せは一致していない」というコメントで 終わっているけれども、もう一歩踏み込んで欲しいと思った。 「いつ逆転するのか」とか、 「ドイツ・日本が健全な金融で勝つための秘策」とか、 具体的提言を以って…。

                                                                            ともあれ、イギリスの金融・不動産の不健全性が表に出るのも 近いうちかも知れない。氏は言う:

                                                                            金利を負担し切れなくなった時がゲームオーバーだろう。
                                                                            p.103

                                                                            …と。イギリスの不動産バブルは去年(2012年)NHKでもやっていた。 誰も住んでないビルに値段が付いているのだ。 そこにホームレスで失業中の大卒の人が住み着いている…。 日本の比ではない格差であり惨状ではないだろうか。

                                                                            [-] 2.3. ケインズ糾弾の根拠

                                                                            数年前から増田氏はケインズを糾弾していたが、 僕にはその根拠が明らかでなく、鵜呑みには出来なかった。 だが、今回、根拠が提示されていた。

                                                                            …不況下で企業が生産を削減し、雇用を圧縮するのは「合成の誤謬」だと指摘はして
                                                                            いる。だが、…指摘するだけではなく、なんらかの対策を講じていただろう(のに、
                                                                            何も提言していない  --引用者注)。
                                                                              一方、「個人家計の貯蓄過剰」については、「合成の誤謬」を指摘するだけではなく、
                                                                            具体的な「解決策」を打ち出している。
                                                                            
                                                                            …ケインズにとっては、身分の違う支配される側…の「個人家計が主犯」で、
                                                                            自分と々支配階級の「巨大企業は従犯」なのだ。その停留にあった意識は、
                                                                            以下の引用で明らかだろう。
                                                                            
                                                                              「…個人は、余りにも無知であるか、またはあまりにも無力である…」
                                                                            
                                                                            p.203 〜 p.205

                                                                            なるほど、不公平な扱いではある。ただ、そこまで庶民を馬鹿にしているのだろうか? 無力な庶民を救う有効な手段をケインズは必死に考えていた、とは見えないだろうか? 分からない。ただ、少なくともケインズに、国民の自律性に期待はしていなかった片鱗 が伺えることは確かだ。

                                                                            [-] 2.4. 国の重要指標 = 失業率

                                                                            失業率の高低は、それ自体で一国の経済がどれほどうまく運営されているかの
                                                                            指標となる。  -- p.257

                                                                            うすうす失業率も大事な指標と思っていたが、 増田氏の援護を受けることができてうれしい。

                                                                            [-] 2.5. まとめ

                                                                            アベノミクスがタイミングとして偶然だったこと、 薄氷を踏むがごとくもろそうなこと、が分かってきた。

                                                                            僕としては、国際金融の肥大化と不正が今の諸悪の根源だと思っているのだけど、 その考えを補強することが出来た。

                                                                            日本・ドイツの進むべきは、英米に負けない健全で公正な金融の強化と 並行しての製造業(含むソフトウェア。 ソフトウェアはサービス業に分類されるかも知れないが、 利益構造の点では製造業と考えて良いと僕は思っている)の更なる発展、 及びそのための不断の勉強・研究・開発・進歩ではないだろうか。

                                                                            [-] 3. デフレ救国論

                                                                            読書ノート

                                                                            ここ数年、増田氏の論調は「日本は底力があるから、 エリートの無能ぶりを暖かく見守ってやろう。」と言ったものだった。

                                                                            そんな呑気なことでいいのかなぁ…と思っていたら、 2012年、増税・TPP の問題が浮上。

                                                                            やはり、日本を私物化しようとする動きは密かに進行していたのだ。 そういう点で、増田氏はこの地下の動きを察知するのに遅すぎたと言えないだろうか。

                                                                            …と言う時になって、ようやく「このままでは危ない」という論調の本が 増田氏からも出た。

                                                                            氏は、インフレターゲット論と国土強靭化法に反対する。 この点、三橋貴明氏と真っ向から対立する。

                                                                            増田氏と三橋氏、思想が近いと思っていたけど、ここで大きな分岐点が見られた。

                                                                            僕はどちらか、と言えば、増田氏の考えに賛同する。

                                                                            三橋氏の意見で、今唯一賛同できるのは、反TPPだけ。

                                                                            今後も要watch だ。

                                                                            [-] 4. お江戸日本は世界最高のワンダーランド

                                                                            読書ノート

                                                                            [-] 4.1. 伊能忠敬

                                                                            僕的に興味深かったのが、伊能忠敬の経歴。

                                                                            彼は千葉の村の三男坊として生まれ、酒造家の未亡人に婿養子となり、 資産を現代推定で2億円を49歳で隠居する時に45億円まで拡大させた、とのこと。

                                                                            この資産があればこそ、第2の人生としての測量も可能だったという。

                                                                            ま、KY暴走老人第一号、と言うのはラベリングしすぎかなぁ。 いつの時代だっていそうな気はする。 増田氏の筆の勢いってことで笑ってスルーしておこう。

                                                                            [-] 4.2. 成果主義 vs 人柄主義

                                                                            タイトルのみ

                                                                            [-] 4.3. 武士・町人共に楽しむ

                                                                            面白かったのは、5章冒頭の大和郡山藩のお殿様 柳沢信鴻 の六義園での暮らし。

                                                                            まぁ、僕がここに書いても無粋にしかならないので、 本文を参照されたい。

                                                                            なかなか江戸って楽しそうですね。

                                                                            [-] 4.4. まとめ

                                                                            もちろん、光あれば闇もある。吉原・飢饉・江戸幕府崩壊に至った 思考の硬直化(井沢元彦の「逆説の日本史」が読みやすい)…

                                                                            両方を見る必要がある。 そして、世界との比較が必要だ。

                                                                            その結論として、やはり日本には世界に誇る文化があったと言えるのだった。 この江戸期に「も」。

                                                                            [-] 5. 世界経済の覇権史

                                                                            読書ノート

                                                                            [-] 5.1. はじめに

                                                                            • 世界金融恐慌は、金融資産という見せかけの富から、 実物資産へと経済の進むべき道を切り替える転轍機の役割を果たす。
                                                                            • 金融業は…ゼロサムゲームだ。
                                                                            • 「帝国」と「覇権国 」という全く違った原理
                                                                            • 帝国には攻勢終末点はあるが、経済覇権国には…ない
                                                                              • 大英帝国とロシア帝国が…中央アジアを巨大なチェス盤として争った 『グレート・ゲーム』は、ほぼ一貫して…貧しい国々を舞台に展開された。
                                                                              • 今また、1930年代の大不況を経て経済派遣大国から大軍事帝国に成り下がってしまったアメリカは、 中東中の「イスラム原理主義諸国」に自らの墓標をばら撒いた上で、 四分五裂の悲惨な末路に喜び勇んで跳び込もうとしている。 …つくづく人間は歴史に学ばない動物と思わざるを得ない。

                                                                            [-] 5.2. 第1章

                                                                            [-] 5.2.1. ヒッタイトが技術覇権国家となった理由

                                                                            • 実証されている事実
                                                                              • ヒッタイトは良質の鉄(鋼)を作る(当時の)最先端ハイテク技術及び兵器 (最高の切れ味の刀・最も軽量・最速の戦車)を持っていた。
                                                                            • 通説
                                                                              • ヒッタイトはこの技術を秘匿していたため、その優位性から覇権国となった。
                                                                            • 氏の疑問
                                                                              • 戦場に置いて1:0で全滅という事は(特に現代戦以前では)ありえない。 ヒッタイトの武器を鹵獲して研究する余地は敵国にもあったはず。
                                                                              • 仮にヒッタイトの技術が100%秘匿されていたとしても、 他国が独自に開発できないほどハイテクだったとは思えない。
                                                                                • 「浸炭法」という、鉄と炭を交互に置いて熱する方法だったとのこと。
                                                                              • ヒッタイトは、別人種のプロトヒッタイト人からこの技術を継承していた。
                                                                                • → ヒッタイトのみが継承し秘匿できたわけではない、という可能性は 考えられるが、ヒッタイト滅亡後に鉄の使用が他国に拡散したのは 歴史的事実とのこと。つまり、ヒッタイトの優位性は (「秘匿」のためかどうかは疑問としても)あったわけだ。
                                                                            • 氏の予測
                                                                              • 「秘匿」ではなく、ヒッタイトで技術者発展が可能であり他国で発展できなかった 社会風土の差ではないか。
                                                                                • その傍証として、増田氏は、他国では鍛冶職人が蔑視されていた風土を挙げ、 また、ヒッタイトの考古学者大村幸弘氏の書のクライマックスの箇所を 引用する。あまりに面白いのだけど、それはここには引用しない。 本書を当たって欲しい(^_^)。

                                                                            [-] 5.3. 第2章

                                                                            ローマの衰退理由、その1つ

                                                                            攻勢を保つ覇権国家は間に合わせの軽軍備しか必要とせず、守勢に回った
                                                                            帝国は重装備の常備軍を必要とするという真理
                                                                            p.99

                                                                            [-] 5.4. 第5章

                                                                            池田徳真「プロパガンダ戦史」

                                                                            イギリス諜報部の暗躍を書いた書。読まねば。

                                                                            [-] 6. 世界は深淵をのぞきこみ、日本は峻立する

                                                                            読書ノート

                                                                            [-] 6.1. 製造業時間辺り賃金比率

                                                                            p.113

                                                                            アメリカを100とする相対比。2008年時点。

                                                                            ユーロ:134
                                                                            アメリカ:100
                                                                            日本:86
                                                                            東アジア:41
                                                                            メキシコ:13
                                                                            フィリピン:5
                                                                            中国:4

                                                                            労賃の日本とアジア諸国の比に関し、大竹氏の出す事例と矛盾はしてないが、 増田氏はユーロの生産性の低さを指摘し、大竹氏は(中国に対する)日本の 生産性の低さを指摘する。

                                                                            この点は、今後の課題。

                                                                            [-] 6.2. ケインズ派経済学の大ウソ

                                                                            p.114

                                                                            ユーロの赤字財政に対し、こう指摘する:

                                                                            財政や金融で消費を刺激すれば...みんなが幸せになるという
                                                                            「ケインズ派経済学」の大ウソ

                                                                            [-] 6.3. イギリスはユーロに入らなかったのか、入れてもらえなかったのか

                                                                            p.137

                                                                            イギリスはユーロに加盟していない。

                                                                            この点について、野口悠紀雄氏は確か「イギリスの賢明さ」として評価していた と思う。

                                                                            他方、増田氏は、財政危機の根が深かったためユーロに入れてもらえなかった、と説く。

                                                                            どちらが真実か、今後の課題。

                                                                            [-] 6.4. バンク・オブ・アメリカの利益は全て会計上の操作

                                                                            p.169

                                                                            T/O。2011年第三四半期。詳細は略。

                                                                            [-] 6.5. 国の指標=対外債務、≠国債残高

                                                                            p.175

                                                                            一国の経済にとって重要なのは、国債の残高ではなく、
                                                                            官民両部門を合わせた対外債務の総額なのだ。

                                                                            [-] 6.6. 中央銀行は、マネーサプライも実質金利も調節できない

                                                                            p.207

                                                                            以下の恒等式を使って、説明する:

                                                                            GDP = P * Q = M * V

                                                                            名目金利をコントロールはしている、という注釈はある(p.210)。

                                                                            ここは、大竹氏と大きく意見が分かれているところだろう。 大竹氏の意見を聞いてみたいところだ。

                                                                            [-] 6.7. アメリカ経済に...デフレが忍び寄っている。

                                                                            p.229

                                                                            貨幣流通速度 V がこの110年間の統計を見る限り、ここ数年で急激に下がってきている ことを根拠に、増田氏は上のように言う。

                                                                            もちろん、M にしろ V にしろ、数値はあくまで結果だ。 その数値が出る背景・数値が変化する背景こそが重要なのだ。

                                                                            ここに、人間の「生活」まで踏み込んだ分析が必要な所以だ。

                                                                            では、なぜアメリカの V が下がるのか。 そこのところが今ひとつ僕には分かってない。

                                                                            [-] 7. マネジメントの日米逆転がはじまる

                                                                            [-] 7.1. 首切り→縮小再生産という道

                                                                            勤労者のクビを切って労働生産性を上げるという手...
                                                                            (それは)縮小再生産によって労働生産性を上げているだけの
                                                                            「ジリ貧への道」なのだ。 p.29

                                                                            クビ切りそのものが問題なのではない。以下の点に注意しなければならない:

                                                                            • 短期的利益と引換に中長期展望を売り渡していないか

                                                                            そして、アメリカはそうなる、と増田氏は予想している。

                                                                            [-] 7.2. 格差と失業率

                                                                            就業人口の6%程度を占めるに過ぎない金融業が、
                                                                            安定的に全企業利益の約三分の一を稼ぎ出すようになった一九八〇年代以降、
                                                                            アメリカ経済全体の成長率は鈍化し、貧富の格差は拡大した。  -- p.40

                                                                            「6%の業界が全利益の30%を稼ぎ出す」…

                                                                            もちろん、これで全体のパイが大きくなったというなら文句はない。 しかし、以下が既に反論封じとなる:

                                                                            • 同期間の失業率の増加
                                                                            • 同期間の貧富の拡大
                                                                            • 同期間の生産性伸び率より低い民間部門労賃上昇率

                                                                            [-] 7.3. 芸能人のウラオモテ

                                                                            本筋ではないが、興味深いエピソードだったので挙げる:

                                                                            私はまだ留学して日も浅いころは、アメリカの芸能人たちの
                                                                            受け答えや意見表明を聞いて「何としっかりした人たちなのだろう」
                                                                            と感心してしまったのだ。…だが、アメリカに四〜五年も暮らすと、
                                                                            …(中略)…紋切り型で、問答集の一節だということがバレてしまう。
                                                                            p.90

                                                                            [-] 7.4. スケールメリットが成立しない条件

                                                                            自動車会社として、世界中で年産数百万台を生産したからといって、
                                                                            生き残れる理由はひとつもない。…(破綻した)GMは世界最大の自動車
                                                                            メーカーだった。  p.102

                                                                            スケールメリットが無効とは言わない。しかし、世界最大のメーカが破綻した ことを考えれば、単なるモノサシの1つでしかないことは明らかだ。

                                                                            増田氏は、GMに対する反例としてホンダを挙げる。 合併におもねらず、独立不羈の精神で躍進し続けている。

                                                                            ホンダは私も好きな会社だ。学ぶべきことが多い。 ホンダを危ぶんでいた評論家やメディアは何を見ていたのだろうか…?

                                                                            [-] 7.5. MBA の失敗は現場軽視にある

                                                                            1984年5月、(アメリカの名門工作機メーカだった)バーグマスターは静かに消滅した。
                                                                            
                                                                            …バランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書の財務三表さえ
                                                                            しっかりコントロールしていれば、技術者や現場の工員など知らなくても、
                                                                            起業は利益を生み、成長を続けるという信念の…大きな犠牲者だった。
                                                                            p.111

                                                                            [-] 7.6. ベンチャーキャピタルは不細工な代用品

                                                                            p.129 にて、氏は「ベンチャーキャピタルは不細工な代用品」と指摘する。 リスクとリターンのコストバランスが悪すぎるから、という。

                                                                            興味深い指摘だ。今までこういうことを言う人はいなかった。 それだけでも(私にとっては)傾聴に値する。

                                                                            だが…。日本では、社員に会社への滅私奉公を強いていたのも事実だ。 そして、バブル崩壊後、手のひらを返してクビ切りをしたのも事実だ。 だから「家族的経営」の神話は1990年代を持って崩壊した。 その証拠として、私は仲人制度の激減を挙げたい。

                                                                            (TBD: 証拠サイト)

                                                                            [-] 7.7. 「労働生産性」の嘘

                                                                            p.209 からの一節は、これだけで私にはこの本を買った意味があったと思えた ものだった。

                                                                            長年謎だった「日本は労働生産性が低い」ことへの氏の回答が大変興味深い。

                                                                            一社独占でないため利益率が低い

                                                                            それだけだった。大きな一言だ。つまり、品質が悪かろうと値段が高かろうと 市民はその一社のモノ・サービスを買わざるを得ない。だから利益率は高い。 それが労働生産性にも現れていた、ということだった。

                                                                            同じ製品に対してなら労働生産性は意味がある。 しかし、粗悪品(Walmartの例)・一社独占が反映されない「労働生産性」は 一面に過ぎない指標だったわけだ。

                                                                            [-] 7.8. 使える指標

                                                                            様々な指標のうち、何を見ればいいのだろうか。 氏は最後の章で、対外純資産を挙げている。

                                                                            • 対外純資産
                                                                            • 失業率

                                                                            他の1つは、失業率だろうか。 (→ 「経済学『七つの常識』の化けの皮をはぐ」も参照)






                                                                            Generated by juli 2.3.2